I can't return








「卒業…おめでとー!!」



わっと皆で盛り上がった。

ハリーもロンもネビルもラベンダーもシェーマスも…そして私も盛り上がった。



今日で私はホグワーツを卒業した。

この7年間は本当に素晴らしい時だったと思うわ。確かに嫌な事もいろいろあったけどそれ以上に楽しいと思える事があって、例えばあの机で私はいつも勉強してたんだなぁとか、あそこでいつも食事をしていたんだとか、思い出はいっぱいある。





「あれ、ハーマイオニー?何処行くのー?」



わぁわぁと騒いでいる皆からこっそり抜け出そうとしたけれどロンが声をかけてきた。



「ちょっと風に当たりに行くのよ」



そう言うとロンは適当に返事をしながらまた皆の輪の中へと戻っていってしまった。

もしかしたら一緒に行くよとか言われるのかな?なんて期待してた私が居たりする。









「…はー…」



夜の風は火照っている私にとって、とても気持ちのよいものだった。

明日から私は学生ではなく、社会人として生きていく。魔法省に務めて、頑張って働いて、今以上に充実した日々を過ごす。ホグワーツの職員という事も考えた時期があったけどやはり私は魔法省で働く方が向いている気がして止めた。









「グレンジャー?」



後ろから声がして振り向くと、マルフォイが居た。

どうやら彼も私と同じように暑そうにしていて、この風に当たりに来たみたいだった。



「あら、マルフォイ。スリザリンでも騒いでるの?」

「ああ、僕はそういう雰囲気が苦手でね。こうしてここに逃げてきたってわけさ。君は?」

「私もそうよ。風に当たりに来たの」



やはり、私達も大人になったのだと実感した。

何年か前までは会う度に嫌味しか言い合わなかったけど今は違う。こうして普通にマルフォイと会話してるなんて当時に私にとってはきっと信じられない事に違いない。



「…グレンジャー、魔法省に務めるんだってね」



マルフォイが聞いてきた。



「えぇ、そうよ。あなたは……」



そこでしまったと後悔したわ。

だって……



「…」

「あ、何でもないわ」



さっと視線を背けて夜空を見つめる振りをした。



分かっている。

マルフォイ家に生まれてしまったからにはその道を死ぬまで進まなければいけない。私なんかが言ったところでどうにもならないし、仕方のない事。

だから、だから私はずっと黙ってきた。隠してきた。もしかしたら彼にもすでに伝わっているんじゃないだろうかと思った事もあったけど。お互いに何も言えはしない。



「別にいい、気にする事はない」

「…そう…」



それに、私も気付いていたのかもしれないわ。

数年前から見てくるその視線に。ただ、気付かない振りを互いにして何もないかのように振舞って今日まで来た、とか。考えられない事もない。このすべてのプライドを捨ててまで私は、あなたにその想いを伝える事は出来ないのよ。きっとそれはあなたも同じなんでしょうけどね。











「…グレンジャー…実は、ずっと言いたかった事があるんだ」





心臓が跳ね返った。

何を言うつもり。言いたかった事って何。

…まさか、言うはずないわ。そんな勇気、あなたなんかに…



「な、に…」

「君も、薄々気付いてたと思うんだけど…」



聞いてはいけない。何か適当に言い訳をしてここからロン達の所へ走って戻るのよ!

…いいえ、きちんと聞くべきだわ。彼が何を言うか知ってるくせに…別にいいじゃない?



頭の中で2つの声が鳴り響いていた。

でも、このままだと私は…





「君のこと…」





きっと、戻れなくなってしまう。












※シリアス目指してみたのに…。